英語スピーチの極意（１）レーガン大統領の演説 - レーガン大統領とクリントン大統領に学ぶ：外国語広場

　　　

▼"Great Communicator"レーガンに学ぶユーモア

"Great Communicator"はレーガンの代名詞ともなった。その卓越したユーモアセンスもコミュニケーションの潤滑油として大いに役立ったと言える。レーガンが生前、公の場で行った最後の演説からその例を見てみよう。

Address to the 1992 Republican National Convention (August 17, 1992)
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ブッシュ（父）大統領の再選をめざす1992年の共和党大会。レーガンは元大統領として、ブッシュの応援演説で登壇した。会場は総立ち、割れんばかりの拍手。

レーガンは、スピーチをこう始める。

Tonight is a very special night for me.
Of course, at my age, every night's a very special night.

盛り上がりを見せる共和党大会の場なので、今夜は「特別な夜」だと言う。
一呼吸おいて Of course, と続け、「私くらいの歳になると、毎晩が特別な夜なんですが。」

これをライブ中継で真剣に見ていた私の頬は思わず緩んだ。会場も笑いで包まれる。レーガンは自分が1911年生まれで、既に80歳を超えていることを自虐的に述べて場を和ませた後、

After all, I was born in 1911. Indeed, according to the experts, I have exceeded my life expectancy by quite a few years. Now this is a source of great annoyance to some, especially those in the Democratic Party.

と続け、さらに

But, here's the remarkable thing about being born in 1911.

と畳み掛けるように語りだす。80年の人生で、共産主義の誕生も終焉も目撃した。悲惨な二つの世界大戦も、ベトナム・ペルシャ湾岸での戦争も見てきた。そして素晴らしいアメリカの世紀も経験した。

これは巧みな応援演説の始め方だ。この時の大統領選の敵方となる民主党の候補者は、歳若きビル・クリントン。ブッシュ（父）現職大統領とは、その年齢と経験が対照的だった。

ブッシュ（父）の豊富な経験を、経験不足で年も若い敵と際立たせるために、レーガンは自らの年齢を自虐的にユーモラスに述べて聴衆を和ませてから、その年齢の持つ肯定的な意義を実例を挙げながら説得的に語る。そしてそれは、ブッシュ（父）の最大のセールスポイントなのだ。

▼レーガン大統領の演説を分析し、決め台詞を紹介した本

レーガンがベルリンの壁を前に "Mr.Gorbachev, tear down this wall !"（「この壁を取り壊しなさい！、ゴルバチョフ書記長。」）と迫る有名な演説の抜粋が、『リーダーの英語 - スピーチの達人に学べ』 に音声CDつきで収められている。同書では、スピーチの背景や詳細な解説がなされておりおすすめだ。
また同書では、「説得力のあるスピーチ」としてレーガン大統領とサッチャー首相の演説を取り上げ、次の4つのポイントで分析する。
　1．聴衆を説得するには
　2. 誰に焦点を当てて話をするか
　3. 説得する具体的手法とは
　4. 聞き手のあるべきスタンスとは

■リーダーの英語 - スピーチの達人に学べ おすすめ アメリカ大統領とイギリス首相を中心としたスピーチの主要部分のトランスクリプトを収録。スピーチの構成と書き方、話し方と話法の分析も含めて、解説。音声CDつき。

レーガン大統領の有名な演説
■Address to the nation on the Challenger disaster (January 28, 1986) スペースシャトル・チャレンジャー号事故への追悼演説。名演説として知られている。	映像(Real Player)　テキスト \| 映像＆テキスト \| ■NPR: スペースシャトル事故　追悼演説チャレンジャー号レーガン(1986年1月28日）とコロンビア号ブッシュ(2003年2月1日）　NPRのサイト。レーガンの有名なテレビ・ラジオ演説。ページ下部にレーガンの演説原稿と音声リンクあり。
■Address to the 1992 Republican National Convention (August 17, 1992) 1992年共和党大会　ブッシュ（父）大統領への応援演説。公の場での最後の演説。	映像(Real Player)　テキスト
■Tear down this wall - Speechs at the Berlin Wall (June 12, 1987) ベルリンの壁を前にしての演説。	映像(Real Player)　テキスト \|　音声＆テキスト背景：Inside Story of Reagan's Berlin Challenge to "Tear Down This Wall!" 【書籍】『リーダーの英語 - スピーチの達人に学べ』演説の抜粋が、詳細な解説と音声CDとともに収められている。
■Marking the 40th Anniversary of D-Day (June 6, 1984)	映像(Real Player)　テキスト \| 音声＆テキスト
■First Inaugural Address (January 20, 1981) 第1期大統領就任演説	映像(Realy Player)　テキスト \| 音声＆テキスト

クリントン大統領の有名な演説
■Acceptance Speech -　Nomination at the Democratic National Convention (August 29, 1996)	音声＆テキスト
■First Inaugural Address (January 21, 1993) 第1期大統領就任演説	音声(MP3)＆テキスト \| 映像（抜粋）　テキスト
■2000 Democratic National Convention (August 14, 2000) 2000年民主党大会ゴア大統領候補への応援演説	音声　テキスト \| 映像（ページ中ほどにBill Clintonのせんぜつへのリンクあり）
■2004 Democratic National Convention (July 26, 2004) 2004年民主党大会ケリー大統領候補への応援演説	映像＆音声＆テキスト

レーガンとクリントンのスピーチの分析・スピーチ集
【Reagan & Clinton】 ■Farewell Themes in the State of the Union レーガンとクリントンの最後のThe State of the Union address（一般教書演説）	NPRの番組　レーガンとクリントンそれぞれ最後の一般教書演説の音声・映像・テキストへのリンクあり。
■C-SPAN: Ronald Reagan Audio Recordings	音声　レーガンについての特別番組。1時間20分ほどの番組が２つ。レーガン本人の肉声も多数登場。
■レーガン： PBS Newshour: In His Own Words "	great comunicator"の名スピーチの映像と音声。
■レーガン： NPR: Ronald Reagan, In His Own Words	有名なスピーチの音声クリップ集。
■レーガン： University of Virginia: Ronald Reagan Speeches	レーガンの有名なスピーチ音声と原稿。
■クリントン： Clinton's Speeches	NPRの番組 Morning Edition, January 1, 2001 クリントンのスピーチスタイルについてクリントンのスピーチライター Michael Waldman自らが語る
■Clinton As Communicator	NPRの番組　All Things Considered, January 19, 2001 スピーチライターMichael Waldmanへのインタビュー。
■What Makes a Great Orator?	NPRの番組　Talk of the Nation, October 27, 1999

■Building a new Pacific community: クリントン大統領　早稲田大学でのスピーチ原稿

■CNN: Reagan Speech Archive