凡例:便宜上、紹介する文献の性質・難易度を次のAからEに分類し、末尾に示しておきます。
A:入手も容易で、初心者にも使いやすいと思われるもの。
B:入手が比較的困難、あるいは「イスラーム」についてより深く知りたい方に適するもの。
C:少々専門的で、分野・地域を絞ったうえで、特定のテーマについて参照する際に有用なもの。
D:かなり学術的なもの。
E:肩の凝らない読み物。
1.工具書(レファレンス)
・板垣雄三(共編)1992.『事典 イスラームの都市性』亜紀書房。B
・黒田壽郎 1983.『イスラーム事典』東京堂出版。B
下記の平凡社のものより項目が大きくとってあり、詳しいと同時に叙述的。平凡社のものとの併用をお勧めします。
・日本イスラム協会, 嶋田 襄平, 佐藤 次高, 板垣 雄三(監修) 1999.『新イスラム事典』平凡社。A
・大塚和夫,小杉泰,小松久男,
東長靖,羽田正,山内昌之(編)2002.『岩波イスラーム辞典』
岩波書店。A
イスラームに関する語彙、人名、歴史的事件などについて簡潔に解説をつけたもの。カタカナで見出しが立ててあるので初心者に最適。
・三浦徹(共編)1995.『イスラーム研究ハンドブック』(講座イスラーム世界 別巻)栄光教育出版社。A
イスラーム研究について分野別、地域別、時代別に分離し、それぞれについて研究動向を示したうえで主要な参考文献を提示。初心者にも使いやすい体裁になっており、現在最強のハンドブックといってよい。ただし、内外すべての研究を網羅しているわけではないので、日本での研究については下記、『日本における中東・イスラーム研究文献目録』や『日本における中央アジア関係研究文献目録』、海外については下記のIndex
Islamicusで補うことが望ましい。
・ユネスコ東アジア文化研究センター(編) 1992.『日本における中東・イスラーム研究文献目録 1868-1988』東洋文庫附置ユネスコ東アジア文化研究センター。C
・ユネスコ東アジア文化研究センター(編) 1988.『日本における中央アジア関係研究文献目録1879−1987』東洋文庫附置ユネスコ東アジア文化研究センター。C
・Gibb, H.A.R.et al(eds.) 1979- The Encyclopaedia of Islam, New Edition,
Leiden. B
現在、最も信用に値するイスラム百科事典。アルファベット順に配列されているが、アラビア語をローマナイズしたものを見出しに立ててあるので、初心者には若干使いにくい面も。また現在刊行中でSの項目までしかみることができない。各大学、研究機関、大手図書館に必置のもので、この事典がない場合、その図書館は少し怠慢。
・Houtsma, M.Th et al(eds.) 1913-1938 The Encyclopaedia
of Islam, Leiden. A
上記の百科事典の旧版。新版で引く事のできないT以降の項目をこれで調べることができる。
・Gibb,H.A.R.&J.H.Kramers(eds.) 1953 Shorter Encyclopaedia
of Islam, Leiden.A
引きやすいがあまり使えない。
・Pearon,J.D.(and his students comp.) 1958- Index
Islamicus Cambridge. C
1906年以降の世界各国のイスラーム研究文献をヨーロッパ諸語で発表されたものを中心に網羅した研究文献目録。
2.叢書・概説書・入門書
・板垣雄三・佐藤次高(編)1986.『概説イスラーム史』有斐閣。A
・板垣雄三(監修)1994−95.『講座イスラーム世界』全5巻 栄光研究出版。B
・今永清二 1992.『東方のイスラーム』風響社。A
インドネシア・タイ・中国などの地域のムスリムについて、その歴史と現状を概説。
・上岡弘二他(編) 1984.『イスラム世界の人々』全5巻 東洋経済出版社。B
現地体験豊富な人々を執筆陣とし、地域研究の視点から各地のムスリムの生活などを紹介したもの。
・中村廣治郎 1977.『イスラム−思想と歴史−』東京大学出版会。B
イスラームの思想と歴史に関する総合的な概説書。
・山内昌之・大塚和夫(編) 1993.『イスラームを学ぶ人のために』世界思想社。B
新鋭の研究者を執筆陣とし最新の研究を反映しつつ、各地域のイスラームの歴史・現状を概説。各地域のイスラームの相違点・共通点についてイメージを作るのに有効。
・Gellner,Ernest. 1983. Nations and Naionalism, Ithaca,
Cornell University Press. C
・Gibb,H.A.R.(加賀谷訳)1980.『イスラム−誕生から現代まで』東京新聞出版局。A
・Smith,W.C.(中村訳)1974.『現代におけるイスラム』紀伊国屋書店。B
3.新書・文庫など
・荒 松雄 1977.『ヒンドゥー教とイスラム教−南アジア史における宗教と社会−』岩波新書 黄版8.A
・井筒俊彦 1980.『イスラーム哲学の現像』岩波新書。B
・大野盛雄 1971.『アフガニスタンの農村から』岩波新書。A
・岡倉徹志 1987.『イスラーム急進派』岩波新書 黄版380.A
中東諸国の国内情勢・国際関係の変化に対し、イスラーム「原理主義」の台頭の面から考察。
・小杉 泰 1994.『イスラームとは何か−その宗教・社会・文化』講談社現代新書。A
・佐藤次高 1991『マムルーク−異教の世界から来たイスラムの支配者たち−』東京大学出版会。A
13世紀以降のアラブ世界に見られた、奴隷軍人について「立身出世の登竜門」という側面を強調しつつ、わかりやすく解説。
・鈴木 薫 1992.『オスマン帝国−イスラム世界の「柔らかい専制」−』講談社現代新書。A
・中田吉信 1971.『回回民族の諸問題』(アジアを見る目 40)アジア経済研究所。A
中国のムスリムの歴史・社会などについて分かりやすく解説した良書。
・前嶋信次(訳) 1991.『アラビアンナイト』平凡社東洋文庫(再版)。E
名著かつ名訳です。
・前嶋信次(訳)1991.『三大陸周遊記』角川文庫(再版)。E
マグリブから中国までを見聞した14世紀の大旅行家イブン・バットゥータの旅行記の部訳。
4.コーラン・ハディース
・井筒俊彦(訳)1957−58.『コーラン』(上中下)岩波文庫。A
奔放な訳出を楽しめます。
・日本ムスリム協会訳 1982.『日亜対訳注解聖クルアーン』。A
井筒訳より訳出は正確。ただし、少し退屈です。
・牧野信也(訳) 1993−94.『ハディース−イスラーム伝承集成』中央公論。B
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