英語とのつきあい方: 第1回 どのレベルを目指す? 仕事で使える英語力 3つのレベル

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なぜ英語が必要か?

英語は、事実上の世界言語となっている。言語帝国主義だと叫んで、英語の跋扈に反対するのも良いが、それを訴えるのも多くの人が理解できる言葉でなければならな い。その目的を果たそうと思えば、やはり英語を使わざるを得ないという矛盾にさえ 陥るのだ。

英語の運用能力が、一国の経済やらその国の国際舞台での政治力に大きな影響を与え るようになっている。改めて言うまでもなく、アジアでも一国を挙げて英語能力の向 上に努めている国も多い。その一方で、英語が第1言語の人々もいるわけだから、英語を母国語としない国の人間には、まことに不利な世界になってきている。

そんなの不公平だと嘆いて見たい気にもなるが、嘆いてみたところで始まらない。も ともと世界の歴史は、言語にとって、そんなに公平なものではなかったし、グローバ リゼーションの流れの中で、世界共通の言語の必要性は高まりこそすれ、衰えることはない。

こういった現実を直視した上で、世界と渡り合ってゆこうと思えば、その手段としての英語の運用能力を高めるしかない。

▼到達目標を明確にすることが第一歩

そんな御託よりも、TOEICである程度の点数を取らないと、勤務先で昇進もできな い、という切羽詰ったビジネスマン(ウーマン)もいるだろう。TOEFLをクリアしな いと、留学できないという人もいるかもしれない。いずれにせよ、目的を具体化する のは、決定的に重要なことである。

外国語を学ぶことは、頂の見えない山に登ろうとするようなものだ。ひとつの言語は 長い歴史を経て現在の形となり、そして変化を続けている。さらに、その言語の使われる世界のあらゆる事象を表現するものであるのだから、そうやすやすと微笑んでくれるわけはない。どのような言語でもその最終的な征服点など、見ることはできないのだ。

だから、英語とつきあう上での、まず第一歩は、自分にとってどのレベルの英語が必要なのかはっきりさせることだ。つまり到達目標を明らかにするということである。

到達目標を明確にしておかないと、底なし沼に足を取られるがごとく、ずぶずぶと深みにはまり、もがく苦しむこととなる。もっと良い教材があるのではないかと探し回り、自らの怠惰にあきれ、自分の記憶力の悪さを嘆き、果ては何でこんな馬鹿に俺を生んだのかと親を恨んでみたりする。

そんな不幸な人生を続けずとも済むように、自分に必要な英語力というものを、まずははっきりさせよう。そのレベルまで到達したら、とりあえずは目標達成として祝杯を挙げ、それ以上はあくまでプラスアルファだと考えよう。英語そのものを専門とする職にある人でもない限りは、精神衛生上そのほうが健全だ。

とりあえずの目標に到達したのちに、それ以上の英語力を必要とする場面に出くわしたら、辞書を活用したり、優秀な通訳に頼ったりするのだと割り切れば良い。それに、実際のビジネスなどの場面では、英語力そのもの以上に、当該の専門知識や積極性といったことが有効に作用することが多いのだ。

では、もしも英語が必要だという場合に、どのレベルの英語力を目指せば良いか。ここで対象とするのは、仕事で使える英語の能力としたい。専門の分野によっても異なるから、一概には言えないが、おおよその英語力の目安として、ここでは大きく次の3つのレベルに分けてみた。

▼「仕事で使える」英語力 3つのレベル

■実用レベル 試験:英検準1級、TOEFL 550(Computer Basedでは213)、TOEIC 730 程度以上 聴解能力:面と向かってのゆっくりとした会話は、かなり理解できるが、 CNNなどのニュースは、ほとんど理解できず。 語彙力:7,000語程度

■上級レベル 試験:英検1級、TOEFL 610(Computer Basedでは253)、TOEIC 910 程度以上 聴解能力:CNNなどのニュースなどは、半分以上理解できる(気がする)。 語彙力:10,000語-15,000語程度。新聞・雑誌を辞書なしで読み、概ね理解することはできるが、語彙力の不足を感ずる。

■最上級レベル 検定試験の類では計れず。 大学卒以上の教養のあるネイティブスピーカーの英語能力と同じとは行かないまでも、かなりそれに近づく。 英語の新聞・雑誌を、日本語のものを読むのとほぼ同じ程度の気軽さで読める。 聴解能力:CNNなどのニュースは、特殊な専門用語を除いては、ほぼすべて理解で きる。 語彙力:20,000語以上

繰り返すが、まず重要なのは自分に必要な英語のレベルをはっきりさせることだ。 誰もが「上級レベル」や「最上級レベル」が必要とは限らない。もちろん少しでも高 いレベルを目指すことは、立派なことだが、英語の学習に時間を割くよりも優先順位の高い事を抱えている人も少なくないはずだ。

それぞれのレベルの内容は

もし自分には英語が必要だと思えば、少なくとも「実用レベル」を目指すべきだろう。この「実用レベル」がないと、英語を仕事で使うことは難しい。学生時代にあまり英語の勉強には縁がなかった人は、このレベルに達するのにもかなりの困難が伴うだろう。

さらに、日本の外資系企業などである程度自由に英語を使って仕事ができるようになりたいというのであれば、少なくとも「上級レベル」は欲しいところだ。ただ、 このレベルの英語力を身につけるためには、かなりの学習時間が必要である。留学などせずとも、「上級レベル」の英語力を身につけることは十分に可能だが、逆に言えば、 留学したからといってこの段階に達するとは限らない。

「最上級レベル」となると少々ややこしい。このレベルになると英語能力を測る一般的な試験が見当たらない。英検の上を行くものとして、国連英検や通訳検定などというものもあるにはあるが、これらで必ずしも測れるようなものではない。到達点が計りづらく、胸突き八丁といったところだろう。

「上級レベル」と「最上級レベル」との間には、大きな能力的な差がある。「最上級レベル」を目指そうという人であれば、「上級レベル」の英語力がいかにあやふやで未熟なものかは重々承知のことだろう。

「上級レベル」であれば、日本の会社内では、英語のできる人ということで、大抵通用する。しかし、英語を母国語とする人間と対等に渡り合うような仕事を目指すのであれば、「上級レベル」では心もとない。もはや、TOEFLやTOEICといった非母国語者向けの英語試験での点数など役にたたない段階だ。

ネットやPCの恩恵

インターネットやパソコンの普及は、外国語の学習にも画期的な恩恵をもたらした。 実は、英語以上にマイナーな言語の学習に、より衝撃的な効果を与えた。

インターネットが普及する前、私はスペインに留学した。そこで、スペイン国営放送のラジオ番組をカセットテープに何本も録音し、日本に持って帰国。さらに、日本でもスペインのニュースを知るために、ヨーロッパから航空便で送ってくるスペインの新聞 El Pais の国際版を購読し、発行から少なくとも数日は遅れて届く薄い紙でペラペラの新聞を毎週心待ちにしていた。

ところが、インターネット時代には、こんな手間やタイムラグは全く無用となった。スペイン国営放送のラジオ番組は生放送でネット配信されているし、El Paisを含むスペインの主要紙は、コンテンツのほぼすべてをウェブで公開しているからだ。

さらに今までは、日本ではその音声を聞くことすら難しかったような少数言語でさえ も、ネットではその音声や教材を手に入れることができるようになった。

マイナー言語に比べれば、従来から教材には、はるかに恵まれていた英語ではあるが、ネットの恩恵は計り知れない。

そんな英語の学習に役立つリソースを、次回以降紹介して行く。

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